平成23年度仙台弁護士会会長に就任しました森山博です。就任にあたりまして所信の一端を述べさせていただきます。

はじめに

 3月11日発生した東北地方太平洋沖地震及び津波による甚大な被害につき,被災者の皆様に対し心からお見舞い申し上げます。また,震災直後から種々の対応に当たられた多くの方々に深く敬意を表します。

 我々仙台弁護士会は,未曽有の大震災に立ち向かう宮城県民とともにこの困難を克服すべく弁護士会として社会から期待されている役割を十分果たすべく,一日も早い復興を目指し,特に震災に伴う様々な法律問題で困窮されている県民の生きる権利(基本的人権)を擁護し,社会正義を実現することで県民から信頼される弁護士会として公的活動に邁進する決意であります。

第1 震災に関する無料法律相談の実施

 震災後3月23日から電話による無料法律相談を行い,一日約100本の電話相談を受け付けました。そして,仙台,気仙沼,石巻,大河原,古川,登米の各法律相談センターにおける通常相談において震災に関する法律相談は相当期間は無料としました。同時に地方自治体と連絡をとり,要請に応じて特に沿岸部自治体の避難所において出張相談を実施すべく自治体と協議をしております。仙台弁護士会としては可能な限り,これに対応できるよう相談体制をとっていく考えです。

第2 裁判員裁判問題への対応

 2009(平成21)年5月21日に裁判員制度が施行され,仙台地方裁判所では対象事件としてすでに50件近くが起訴され,審理されました。

 当会はすでに裁判員制度の実施を迎えるにあたって,2008(平成20)年10月7日「裁判員制度の課題に関する意見書」を発表しているところであり,今後これらを前提に裁判員裁判の現状と問題点を明らかにするよう調査・検討します。

第3 刑事司法改革について

1 取調べの全面可視化と証拠の全面開示

 昨年は再審無罪となった菅家利和氏の足利事件,厚労省元局長村木厚子氏の厚労省文書偽造事件無罪判決,さらに同事件での大阪地検特捜部主任検事による証拠改ざん事件と刑事司法の根幹を揺るがす大事件がありました。今こそ再審事件,無罪事件を通じて明らかとなってきている取調べの実態を市民に理解してもらい,市民とともに全面可視化,全面証拠開示の早期実現を目指します。

2 被疑者国選弁護制度の拡充

 被疑者国選弁護対象事件の拡大に対応し,多数の弁護士が協力し,順調に運営されております。今後は,全国的に逮捕段階での被疑者援助事件や国選対象外の事件についての援助件数が予想を超えて増加しているとの指摘があり,今後逮捕段階における国選弁護制度と国費による当番弁護士制度の導入や被疑者国選弁護の身体拘束全事件への拡大に向けて取り組みます。

3 全面的な国選付添人制度の実現

 被疑者段階の少年は家裁送致後国選付添人制度の対象外となっています。これは本来国の責務において国選付添人の対象事件を拡充すべきことであり少年が成人被告人に比べ法的援助が受けられない現状は,一刻も早く改善されなければなりません。

第4 司法アクセスの拡充

1 民事法律扶助の拡充

 我が国の法律扶助予算は諸外国と比較すると不十分であり,社会的・経済的弱者の権利実現の理想には程遠い現状になっています。現に近時の貧困問題に適切に対応できておりません。市民に社会のインフラとして極めて重要な制度であることを理解いただき,予算だけでなく,利用しやすく頼りがいのある制度に拡充する活動を続けます。

2 裁判官・検察官の増員,地家裁支部の機能拡大

 司法予算は国家予算の0.4パーセント未満までに減少を続けています。過去40年間に事件数は約3.4倍になっているのに,裁判官の数は1.3倍しか増えていません。地家裁支部の機能縮小は司法改革の「市民に利用しやすく身近な司法」の理念に逆行していると言わざるを得ません。日弁連及び単位会弁護士会はゼロワン地域の解消を人的物的支援により実現し,さらに地方の弁護士過疎偏在対策を進めています。会として,各地方自治体に赴き支部機能拡充の決議などの要請活動を考えています。

3 日弁連中小企業法律支援センター

 日弁連は2010(平成22)年4月1日中小企業の弁護士に対するアクセス障害の改善を図るため「ひまわりほっとダイヤル」の運用を開始し,初回相談無料としています。震災により経済的・法律的に困窮している中小企業に対し,利用しやすい法律相談を提供していきたいと考えております。

第5 法曹養成と法曹人口問題

1 司法修習生に対する給費制の完全復活に向けて

 2010(平成22)年11月26日貸与制の施行を1年間延期する裁判所法の一部を改正する法律が成立しました。

 法改正の趣旨は「経済的理由から法曹になることを断念することがないよう,法曹養成制度に対する財政支援の在り方について見直しを行う」というものでした。

 日弁連,市民団体と共に完全復活に向けて法曹養成制度の在り方を再検討しながら実現を目指します。

2 法曹人口問題

 当会は2008(平成20)年2月23日,司法試験合格者を年間3000人程度とする政策の変更を求める決議をしました。

 日弁連は昨年6月法曹人口政策会議を設置し,本年2月に「中間とりまとめ」案をまとめました。それは「政府及び関係諸機関に対し,当面の緊急対策として司法試験合格者数を現状より更に相当数減員することを求め,適正な司法試験合格者数及び将来法曹人口数について,市民や関係者の意見も聞きながら,今後も更に検証・検討を進め,社会に理解され支持される政策作りを行い,利用しやすく分かりやすくて頼りがいのある司法を実現するための運動を進めていく」というものです。

 私は,前記2008年2月の決議をふまえ,その後の情勢を検討し,会内の意見を集約し,市民の理解と支持を得られるよう市民への説明を行いながら具体的な運動を展開する必要があると考えています。

第6 市民の権利救済

 当会においては法律相談センター及び紛争解決支援センターが他会に誇れるような相談,紛争あっせん活動をしております。さらに,「夜間法律相談」「生活保護および解雇,雇止め法律相談」「ひまわりほっとダイヤル」「弁護士サーチみやぎ」などの相談窓口や広報の実施に力を入れています。今後は市民の権利救済の視点からなお一層の強化取り組みが必要であります。宮城県内の各自治体,社会福祉協議会,その他の行政機関,民間団体と連携し,消費者,高齢者,障害者,交通事故被害者,犯罪被害者などの権利救済のすそ野を広めていく体制を検討したいものです。