| (1)日本弁護士連合会は、1989(平成元)年9月16日の人権擁護大会(松江市にて開催)において、「消費者被害の予防と救済に対する国の施策を求める決議」を採択したところ、かかる決議は、まさに国民・住民の安全・安心を確保するための消費者被害救済の取り組みが、行政の責務であることを前提としたものである。また、2007(平成19)年10月、福田康夫総理大臣は、就任直後の所信表明において「生産第一という思考から国民の安全・安心を重視し、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し消費者保護のための行政機能の強化に取り組む」と述べ、2008年1月18日の第169回国会での施政方針演説では「各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足させ、併せて消費者行政担当大臣を常設する。新組織は国民の意見や苦情の窓口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものとする」旨表明するところ、かかる所信表明・施政方針演説に示される消費者被害救済への対応の必要性は、まさに国民・住民の安全・安心を確保するための消費者被害救済の取り組みが、行政の責務であることを前提としたものである。 |
(2)消費者行政の拡充の現実化・具体化の段階である
上記行政の責務を前提に、これまでの消費者行政のあり方及び多数の消費者被害の発生の現実をみるに、行政がその責務を十分に果たしてきたとは言い難い。 係る現実を受け、上記福田総理大臣の所信表明・施策方針演説、自由民主党の「消費者行政を一元的に担う『消費者庁』を創設」「各省庁がその専門的所管行政を行ううえで消費者保護の施策を講じるための『司令塔』となる」「自治体における消費者行政の拡充」等の提言、民主党の消費者保護官(通称:消費者オンブズパーソン)制度の創設についての素案発表、さらには、2008年2月8日、「各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織の在り方を検討し、その組織を消費者を主役とする政府の舵取り役とする」ため消費者行政推進会議の設置が閣議決定され、「(1)消費者行政を統一的・一元的に推進するために必要な権限、(2)所掌事務及び組織形態(消費者行政を担当する大臣の常設化を含む)、(3)消費者にとってわかりやすい窓口」を検討課題とし、その具体化・現実化に向け議論・検討が重ねられるなど、消費者行政の拡充のための新組織の創設、地方行政の拡充の必要性は共通の認識となっている。 そして、消費者行政推進会議座長の論点整理(平成20年4月20日付け)では「今こそ、消費者の権利を尊重し、「消費者利益の確立」を中核に据えた、21世紀に相応しい行政体制に転換することが必要」と示され、地方消費者行政についても「国と地方双方の消費者行政の一元化〜地方における消費者行政の取組強化〜」「消費者行政の充実のためには、消費者に身近で、日常的に接する地方自治体の役割・機能・能力を一層強化すべきである。」と述べられ、現在は、地方消費者行政の拡充のための具体的・制度的方策が実現化される段階に至っているのである。 |
(3)地方消費者行政の責務
そして、地方消費者行政は、被害救済の最前線にたつものとして、極めて重要な責務を担う。すなわち、上述の行政の責務、憲法上地方公共団体に「行政を執行する権能」が認められ(同94条)、地方自治法上「地方公共団体は、・・・地域における行政を自主的かつ総合的に実施する」(同法1条の2第1項)ものとされていることはもとより、2004(平成16)年に施行された消費者基本法が「国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするために、人材の確保及び資質の向上その他の必要な施策(…)を講ずるよう努めなければならない」と規定していること(同法19条2項)に鑑みれば、地方消費者行政の拡充は、地方公共団体の極めて重要な責務であることは明かである。なお、宮城県消費生活条例第3条の「県は、経済社会の発展に即応して、前条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのっとり、消費生活センターにおける相談業務その他の業務を通じて消費者施策を推進するものとする。」との規定は、上記責務を確認するものである。 |
(4)宮城県消費生活センターの法的位置付け
宮城県消費生活センターは、宮城県の行政組織規則第3章の「地方機関」として、「消費生活に関する相談及び苦情を処理するとともに、地方振興事務所(略)の行う消費生活相談業務の連絡調整を及び指導を行い、消費生活相談業務を総合的に遂行するため」(同規則39条1項)、「1 消費生活に係る相談及び苦情処理に関すること。2 消費生活に係る情報の管理及び提供に関すること。3 消費生活相談業務に係る地方振興事務所との連絡調整に関すること。4 消費者教育に関すること。5 商品テストに関すること」を所掌事務として(同条2項)、知事が設置したものである。そして、事務委任規則は、消費生活条例に基づく知事の権限に属する事務のうち、危害を及ぼすおそれがある商品等の調査及び危害を及ぼすものでないことの立証の要求(同条例9条)、不適正な取引行為の疑いがある取引の実態等に関する調査(同条例15条)、消費者苦情の申出の受理、調査及び処理並びに事業者に対する意見の聴取等(同条例21条)を、消費生活センターの所長に委任している。 上記の条例・規則の定めに鑑みると、宮城県消費生活センターと同所長は、宮城県の消費者行政において極めて重要な役割を担うことが期待されていることが明らかであり、法的に重要な位置付けを与えられているものである。 |