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 裁判ってどんなもの?〜広瀬川一郎の事件簿 家事事件編

 事件の内容

 Aさん(女性)は、7年前にBさんと結婚し、現在5歳と3歳の二児の母です。Aさん夫婦は共働きでしたが、2年ほど前から、Bさんは仕事を休みがちになり、酒を飲んではAさんや子供たちに暴力を振るうようになりました。これに耐えかねたAさんは、子供たちを連れてアパートを出て実家に帰り、別居しながらBさんとの離婚を探ることにしました。しかし、Bさんは、間に立ってくれた親戚の人の説得にも耳を貸そうとしません。子供たちの将来のことを考えた末、晩秋のとある日、Aさんは、仙台弁護士会の有料法律相談を訪れ、その日の担当者だった一郎弁護士に事情を説明しました。
 一郎弁護士の活動

 法律相談〜受任

 Aさんの希望は、Bさんと正式に離婚し、自分が子供たちの親権者として面倒を見ていくということのようです。Bさんにはこれといった財産もなく、お金を払ってもらうというよりは早く縁を切って子供だちと再出発したいという気持ちがAさんの話しぶりから強く伝わってきます。一郎弁護士は、@暴力を受けたことや離婚せざるを得ないことに対する慰謝料請求やA子供たちの養育費請求もできることを説明しましたが、反面、今のBさんの生活ぶりからはお金の支払いを期侍できないと判断し、離婚と親権者の指定を内容とする家事事件として依頼を引き愛けることにしました。

 仙台家庭裁判所に離婚調停申し立て

 法律相談の翌日、Aさんが約束通り一郎弁護士の事務所に訪ねてきました。細かい事情を確認する上では、Aさんにまとめてきてもらったメモがとても役に立ちます。検討の結果、弁護上の名前で話し合いの申し人れをしてもBさんが応じない可能性が高いことから、さっそく仙台家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行い、調停委員を挟んでBさんと話し合いをすることにしました(離婚事件の場台には、原則としていきなり地方裁判所に裁判を起こすことはできず、家庭裁判所で調停をすることから手続きを始める必要があります)。ただし、調停が成立するには相手方の納得が必要なため、不成立になれば地方裁判所に訴訟を起こすことについてもAさんの同意を得ました。そして、離婚に伴う戸籍の問題に至るまでAさんの代理人として法律事務の処理を行うという内容で正式に委任契約を結びました。
 書類を揃えて家庭裁判所に申し立てをすると、第一回目の調停期日がほどなく決まり、当日、一郎弁護士とAさんは一縮に裁判所に出向きました。ところが、Bさんは調停の場に姿を見せず、そのことについて何の連絡もありませんでした。これでは話し合自体ができません。その日は調停委員会にAさんの言い分を説明しただけで次の期日を決めてもらい、帰ることになりました。その後裁判所の書記官からも呼び出しをかけてもらいましたが、Bさんからは何の応答もなく、結局調停は不成立となってしまいました。一郎弁護士としても、この段階では、Bさんが離婚自体に反対なのかどうかも判断がつきませんでした。

 仙台家庭裁判所に訴訟提起

 そこで、一郎弁護士は、あらためて書類を整えて、Aさんの代理人として仙台家庭裁判所に離婚訴訟を起こしました。その際、印紙代が余計にかからない程度でBさんに対して慰謝料の請求も併せて行うことにしました。これは、もしBさんから慰謝料を払ってもらえればAさんの再出発資金にもなるし、それに期待できなくても、Bさんが裁判に出頭してきた際に慰謝料の請求額を減らしてあげることを交渉材料として、離婚と親権者の指定自体について同意してもらうための作戦でもありました。

 裁判手続き

 年も改まったある日のこと、一郎弁護士は、Aさんとともに仙台家庭裁判所の公開法廷で開かれた第一回口頭弁論に臨みましたが、やはりBさんは出頭しませんでした。
 「やっぱりBさんは、自分の落ち度を分かっていたんでしょうかね」。一郎弁護士はAさんにそう言いましたが、Aさんの顔には複雑そうな表情が浮かんでいました。
 ところで、通常の民事裁判では、第一回目の口頭弁論期日に被告が出頭しなければ原告の言い分をすべて認めたものとして手続きを終結して原告勝訴の判決をもらうことができます。しかし、離婚事件では、一般の民事事件と異なり、被告であるBさんが出頭しなくてもAさん本人の話を実際に裁判官に聞いてもらう証拠調べ(本人尋問)手続きが必要となります。 そのため、一郎弁護士は、あらかじめAさんの言い分を「陳述書」という書面にまとめて提出しておきました。そして、次の期日にAさんの本人尋問をしてもらい、さらにその2週間後には、Aさん側の言い分どおり、AさんとBさんとを離婚し、二人の子供の親権者をAさんと定め、Bさんには慰謝料の支払いを命じる判決が下されました。
 判決文も含めて、すべての書類は郵便でBさんのもとに届けられていましたが、Bさんは控訴の手続きをとることもなかったため、Aさんの勝訴判決は確定しました。

 判決確定後の手続き

 「Aさん、よかったですね,勝訴判決が確定しましたよ」(一即弁護土はそう言って、事務所を訪れたAさんに判決文を見せました。しかし、まだAさんや子供たちの戸籍の問題が残っています。一郎弁護士は続けて言いました。「前にお聞きしていたとおり、新しくAさんの戸籍を作って、子供たちもその戸籍に入籍するための手続きを取りましょう」。
 Aさんは、まだ子供たちが小さいことや、再出発する上でBさんの苗字を名乗っているのが嫌なことから、自分の苗字を旧姓に戻して、子供たちの苗字も変更することを希望したのでした。親権者となったAさんが子供たちを自分と同じ戸籍に入籍させるには、面倒でも子供たちの苗字を変えることについて家庭裁判所の許可を得る必要があるのです。
 ほどなく家裁から許可もおりて戸籍関係の手続きも完了しました。Aさんが二人の子供と共に再出発の挨拶をしに一郎弁護士の事務所を訪れたのは、春の日差しが優しくほほ笑む日のことでした。
 一郎の一言

 当事者間で離婚の話し合いがつかない場合には,まず家庭裁判所での調停となります。当事者間の感情の対立が激しく、また離婚に伴う財産の調整が問題となることから、調停申し立ての時点で弁護士に依頼することも十分検討すべきでしょう。

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