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事件の内容
一郎弁護士は、依頼者の一人から、「多額の負債を抱えた友人の相談にのってあげていただきたい」とAさんの紹介を受けました。Aさんは27歳のOLで、債権者からの取り立てにおびえているということです。 一郎弁護土は、さっそく直接Aさんから事務所に電話をしてもらうように伝えAさんと話をしました。Aさんは「債権者から毎日何度も借金を支払えと言う催促の電話が来るんです。もう怖くて夜も眠れません。何とか助けていただきたいんです」と言って声を震わせていました。一郎弁護士は、早急に対応する必要かあると考え、翌朝8時に事務所で打ち合わせをすることにしました。 |
一郎弁護士の活動
事情の聞き取りと破産制度の説明
一郎弁護士は事務所でAさんと面談しました.Aさんの話では、Aさんは勤続7年の独身のOLで月収は手取り約15万円、それに夏冬のボーナスを合わせて年収は約200万円ということでした。これに対して、負債は信販会社・サラ金等10社に対して合計約400万円の借り入れがあり、月々10万円以上の返済をしなければならないということです。 Aさんは、7年ほど前に知人に勧められて信販会社のクレジットカードを作り、カードを利用して生活用品を購入していましたが、5年ほど前に、一時無職となってしまったことから、無職の期間、カードのキャッシングを利用して生活しました。その後就職しましたが、カードのキャッシングの支払がだんだん難しくなってきて、他のカードを使ってキャッシングしたりサラ金から借り入れしたりして生活費と返済に当てるという自転車操業を続けていたのでした。 一郎弁護士はAさんに対し、負債総額からみてAさんの収人だけでは任意整理は不可能だが、親や親戚等からある程度の援助を得られるのあれば任意整理という方法もあることを説明しました。しかし、Aさんの両親は年金生活をしていて余裕はなく、ほかに援助を受けられるあてもないとのことでした。また、一郎弁護土は、一定額を月々支払う民事再生という方法についても話しましたが、Aさんは月収が減ってきているので一定額の支払いは難しいとのことでした。 そこで、一郎弁護士は自己破産申立しかAさんを救済する方法はないことを説明しました(なお、昔は、破産手続を開始する裁判を「破産宣告」と言っていましたが、今は「破産宣告」という言葉は使わず、「破産手続開始決定」と言います)。 Aさんからは、破産手続をとった場合の不利益や破産申立(厳密には「破産手続開始の申立」と言います)の費用について質問がなされました。
A「破産手続きをとったら、業者の取り立てがますます厳しくなるのではないですか」
一郎弁護士(以下:一)「全く心配いりません。弁護士から各債権者に対して受任通知(自己破産の依頼を受けた旨の通知)を送付すれば厳しい取立てはやみます」
A「破産手続開始決定を受けたら、戸籍や住民票に記載されませんか。そうなると、結婚にも支障が出るのですが。」
一「誤解している方が多いのですが、記載されることはありません」
A「破産手続開始決定を受けたことが会社に分かるのではないですか」
一「裁判所から会社に対して破産手続開始決定の通知をすることはありませんので、通常会社に分かることはありません。仮に会社に分かったとしても、会社は破産手続開始決定を受けたことを理由に解雇することはできません」
A「破産手続開始決定を受けた場合借金は支払わなくてもいいのですか」
一「通常自己破産と呼ばれる手続きは、厳密には破産手続と免責手続とに分かれますが、破産申立をすれば、特に反対の意思を表示しない限り免責の申し立てをしたこととして扱われます。免責手続において免責決定が出た場合には借金の支払い義務はすべてなくなります」
A「破産申立に費用はどの程度かかるのですか」
一「当事務所の報酬基準では、着手金、報酬金が、それぞれ20万円以上になっています。ただし、このほかに実費(印紙代、郵券代、予納金等)として2万円程度必要となります。」
Aさんは、破産申立をしても心配したほど不利益はないことを理解するとともに、とにかく業者からの怖い取り立てをやめさせてほしいと考え、一郎弁護士に自己破産の手続きを依頼し、一郎弁護士とAさんは委任契約書を作成しました。 |
受任通知の発送
一郎弁護士は、Aさんに債権者の氏名住所の一覧表を作ってもらい、ただちに各債権者に受任通知を発送しました。これによって、債権者のAさんに対する厳しい取り立てはやんだのでした。 |
破産・免責申立
一郎弁護士は、資料を整理し、Aさんの自己破産および免責申立書を作成して、仙台地方裁判所に提出しました。 |
破産手続開始・同時廃止の決定
Aさんの破産申立については、特に問題となる点がなかったことから、書面による審理だけで破産手続開始決定がなされました。 Aさんには特に財産はありませんでしたので、破産管財人は選任されることはなく、宣告と同時に破産手続が終了する旨の決定も受けました(このように、開始決定と同時に手続が終わることを「同時廃止」といいます。)
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免責審尋期日
Aさんは、裁判所に出頭し、裁判官の質問を受けました。Aさんの場合は免責で問題となる事情がありませんでしたので、他の破産申立をした人と一緒に審尋を受けました。審尋は10分程度で終わりました。 |
免責決定
待望の免責決定が出ました。Aさんのほっとした表情を見て、Aさんの今後の幸せを祈らずにいられない一郎弁護士でした。 |
一郎の独り言
多額の負債を抱えた場合の法的対応には、@債権者と交渉し、返済金額や利息を減らしてもらった上で、それを一括又は分割で支払っていくという「任意整理」と、A総債務額などから月々の返済額を決定し、それを3年から5年の間で支払うことにより残りを免除してもらうという「民事再生手続」と、B借金の支払義務免除を法的に認めてもらうための前提手続きとして行う「破産申立」があります。どの手法をとるかは債務者の返済能力や意向をみなからケースバイケースで決めるので、弁護士とよく相談してください。 なお、破産は一般の人が考えているよりもはるかにリスクの少ない手続きです |